9

小さな夢を抱きしめる



朝がきて夜がきて
太陽があって月があって
晴れがきて雨がきて
重力があって浮力があって
日陰がきて日向がきて

どうしてこうなるの?
そんな幼い質問に人々は口角をつり上げ笑う。
科学が証明している通りだよ、と。

その一言は一切の憶測や想像を拒絶し、廃絶する









三人でどうでも良い日常的な話を続けていると
奥の部屋の方から何か坪を打つようなゴーンゴーンという重い音がした。



「おやまあ、もうこんな時間に。」


「何の音なんですか?」


「時計の音じゃよ。5時になると鳴るようになっておる。」


「夏だからですかね、5時なのにまだこんなに明るい。
・・・お暇しましょうか。」



未だ赤に、夕焼け色に染まらない青い空を見上げた。
大きな入道雲が風に吹かれてゆっくりと空をさすらっていく。
私の言葉によっこらせ、と清秦おじいちゃんは立ち上がり奥に入っていったと思ったら
顔をひょっこり出して俺様天使をちょいちょいと手で呼び寄せた。

金平糖で餌付けられた俺様天使は面倒臭えと言いながらも
素直に下駄を脱ぎ奥に入っていった。
私は足をぶらぶらさせながら二人が帰ってくるのを待った。



「これ一体なんだよ?卵か?」


「今夜になれば分かるじゃろうて。」


「はァ?ワケ分かねえ。」



声がする方を振り返ると、緑色に黒いすじが入っている丸いものを
俺様天使が両手で抱えていた。



「スイカ?」


「偶々知り合いから貰ったからの、お裾分けじゃ。」


「え!いやいいです!!」



顔の前で手を左右に振ると清秦おじいちゃんは
困ったように笑って皺の寄った手で私の頭をよしよしと撫でた。
温かさを感じて思わず私は眼を細め俯いた。



「実は、2個貰ってて困ってたんじゃ。
一人じゃ食い切れんしの。」



自分の為に貰っておくれと言った清秦おじいちゃんに
私は、ぎこちないながらも頭を下げ感謝の意を告げた。
俺様天使が脱ぎ捨てた下駄に足を通し庭へ降りてきた。



「んじゃァな、清秦のジジイ。」


「ちょっと先行かないでよ!
清秦おじいちゃん、スイカありがとうございます! 次、何か持ってきますから!」



慌ただしく飛び出して行く姿を見て
清秦は、口元に柔らかい笑みを浮かべ、
祈るかのように両手を合わせ瞳を閉じた。



「いつでも来なさい、ぜひ尊いお方もご一緒に。」














(あまりにも人間は知りすぎたのか。)