小話

心を配る




クリスマスネタの小話です。
本編とは全く関係がない番外編となります。

※俺様天使視点です























街が、いるみねーしょんとやらで最近きらきら光ってると思ったら

(もちろんあんなもんよりも俺様に引っ付いている
精霊の光の方が綺麗だけどな。)

それに連れて、人間の機嫌が下がっていった。
今日は特に機嫌が悪い。
ほら、今日もあんまり見れたもんじゃねえ顔が歪んでやがる。



「黙れ、腐れ天使が。」














「おい清秦のジジイ!!最近人間の機嫌が悪い!!」


「おやおや。いらっしゃい。
そこは寒いから早くこちらへ来なさい。
身体を冷やして体調を崩すといかんからの。」



窓を力一杯に開けると、ガタンと大きな音が鳴り、
清秦のジジイが軽く眼を見開いて俺様を見た。
立ち上がりかけた足をまた炬燵の中に突っ込んで湯気のたつお茶を啜った。


仕方無えから俺様も炬燵に態々足を突っ込んでやる。



「あの人間は俺様を一体なんだと思ってやがるんだ!」



俺様は「あの世界」で上位に位置する天使様だぞ?
天使が下手に出てりゃあ良い気になりやがって。

だいたいこの俺様が話しかけてやってるんだぞ!

ってオイ、何を笑ってやがるんだ清秦のジジイ。



「あの子はそんなにも機嫌が悪かったのかの?」


「・・・朝会った以降部屋から出てこねえ。」



前にぽんと置かれたオレンジ色の丸い物体にに手を付けなかったからか、
清秦のジジイがその丸い物体を手に取った。
皮をむきながら、清秦のジジイは再度言葉を紡ぐ。



「クリスマス、だからかの」


「くりすます?」


「神と同一視されている者が生まれた日じゃよ。」



僅かに首を傾け、続けるように言った俺の手の中に
皮の中から現れたオレンジ色の実の固まりを清秦のジジイが入れた。
ひんやりと冷たくて甘くて、酸っぱい匂いがする。



「で、それと人間が何の関係があんだよ。」


「・・・あの子も明日になれば元に戻っておろうて。」


「はァ?だから俺様が言いたいのは、」



俺様が続きを言おうとするとオレンジ色の実を口の中に放り混まれた。
俺様は食べながら喋るだなんてはしたない真似はしねえ。
だから仕方なく黙って口の中の実を黙って食べた。



「そうじゃ!ケーキを後で食べるとするかの。のう?」


「けーき?なんだそりゃ。」


「甘くて美味しいものじゃよ。」


「・・・甘い?」


「そうじゃ。」



皺を寄せて小さく笑った清秦のジジイを見ながら俺様は頭の中で思案した。
甘いものは俺様は別に嫌いではない。

(貢げ物なら仕方ねえから貰ってやってるだけだ!)

・・・甘いものといえば、人間もよく甘いものを食べていたような気がする。



「うまいか?」


「美味しいよ。それにの、甘いものには元気にさせる力があるんじゃ。」


「・・・本当か?」



俺様が訝しむように清秦のジジイを半眼で睨むと
清秦のジジイは茶飲みから手を離してゆっくりと頷いた。


ちらりと脳裏に、人間の顔が過ぎる。


小さく舌打ちをして、俺様は炬燵から足を抜いて立ち上がり、
窓の桟に足をかけて清秦のジジイを振り返った。



「・・・人間、連れてくる。



――だから、準備しとけよ清秦のジジイ。」




窓から飛び出すと、冷たい風に髪がふわりと舞い上がる。

こういう日に空を飛んだら、どんな感じなんだろうな。

そんなことをふと思いながらも
顔を埋めるようにして赤いマフラーを首に巻き直し、
ポッケに両手を突っ込み、白い吐息をつきながら、空を仰ぎ見た。



「さっさとけーきとやらを食べて、
いつものような不細工な顔に戻りやがれ人間。」

























(いつもの あなたで いて 欲しい)



(メリークリスマス!)