小話

縋られる者に祝福を



正月ネタの小話です。
本編とは全く関係がない番外編となります。

※日記風です。















『12/31 大掃除』

朝。

大掃除をした。
もちろん俺様天使も引っ張り出して。

炬燵の電源を切って窓を開けたら渋々と立ち上がったから
新聞紙と窓のスプレーを押し付けた。

顔を歪めさせてたけど、スプレーで窓に
絵を試しに描いたらノリノリで窓ふきをやりはじめた。

単純で大変助かった。


「見ろ人間!これが真の芸術だ!!」

「はいはい。」


さて、濡れ雑巾取ってこようっと。






昼。

大掃除の後、清秦おじいさんの所へ行って
年越し蕎麦を一緒に作った。

ちなみに俺様天使は周りをうろうろして
鬱陶しかったから居間へ追い出した。

共に年を越そうと清秦おじいさんに言うと、
「起きてられないからのぅ…」と断られた。

仕方がない。






夜。

ご飯を食べた後、お風呂に入って炬燵で黙々とテレビを見る。
いつのまにか寝てしまい、飛び起きると
肩に毛布がかけられていた。

俺様天使は机に頭を乗っけて此方に顔を向けて眠っている。

カウントダウンが開始される頃には
俺様天使も起きていて年越し蕎麦を食べた。

一息ついて蜜柑に手を伸ばした所でカウントダウンが開始する。

5
4
3
2
1

「(―・・・ゼロ。)」

と心の中で呟いて息を吸う。


「あけましておめでとう。」

「一年の始まりを俺様と過ごしたんだ。
――・・・今年は最高の年になるぜ。」

「・・・・・・。」


自信満々の顔で言われても
あまり信用できないのは気のせいではない。








『1/1 正月』

初日の出を見るためにアラームをセットして少し眠る。


アラームが鳴り、上着を羽織ってから外へと出る。
森を抜けた所にある丘で地面に座りながら初日の出を待った。

寒い寒いと喚いていたら、俺様天使が一度こちらに手を伸ばし
不意に指先を動かすと、吹き付けていた冷たい風が収まった。


「なにしたの?」

「俺様が寒かったから精霊の力を制御させた。」


そんな言いぐさをするけれど、「ありがとう」と呟くと
俺様天使は耳を赤くして慌てたようにそっぽを向くのだ。








空が大きなパレットになり、様々な色が混じりあう。
古代紫が菖蒲色で霞み、藍色が広がり、瑠璃色を取囲み橙色が滲み出る。

赤と白と黄に光を混ぜたような艶やかな輝きが
時間の経過と共に鮮やかな色合いを生み出す。

まさに朝日がその姿を現す時、
俺様天使が私の向かい側に足を歩ませた。

私の光輝く色鮮やかな視界に煌めく白銀色が覆い被さった。
艶やかな柔らかい白銀の双翼が一度震えてからバサリと広げられる。
日の出の光を浴びて、より一層、白銀が煌々と輝きを増す。
光に包まれた光景が

――・・・あまりにも神聖で尊く、侵しがたい。

一種の畏怖に自分が呑み込まれた瞬間、
光を背にして俺様天使がこちらを振り向いた。


「この光景を焼き付けろ。俺様がお前を祝福してやる。」


祝福、それは幸福を喜び祝い、そして祈ること。
「天使の祝福だ。感謝しろよ?」だなんて
偉そうな言い方だけど、そうやって綺麗に優しく私に微笑むからズルい。
だから私も俺様天使に駆け寄って頬に祈りを込めてキスを贈るのだ。









( どうか 縋られる 天使に 少しでも 祝福を )