「ジャック、この方だ。」
「・・・こいつの子守でもしろってか?
いつから此所は訓練所から託児所になったんだ?」
「口が過ぎるぞジャック。お嬢様に失礼だろう。」
男に伴われて来た少女を訝しげに眺め回した後、
今より幼い顔立ちをしたジャックは、ポケットに手を入れて
少しばかり不満そうに口を尖らせた。
「主サマのご自慢のお嬢サマだとかなんて
オレには関係ねぇよ。で?テメェの名は?」
「ジャック!」
「お気になさらないでガレット教官、私なら構いません。
初めましてジャックさん。アウラと言います。」
そう言ってアウラは、ジャックに柔らかく微笑んだ。
深い大地は、その身で慈愛を表すが如く
全てをその身に淡々と染み渡らせる。
果てなき空は、その瞳で裁定者が如く
太古より地上を見続ける。
嫌だと叫ぶこともできずに。
瞳を逸らすこともできずに。
流れる雲は、少しだけならばと言わんが如く
大地に雨を降らし染みを薄くし
空に覆い被さり瞳を隠す。
愛し子よ、我らはもう、赤い海は見たくない。